パニック障害(不安障害)

パニック障害(不安障害)の症状
 
当院に来られる多くの方は、仕事や家庭のことなどで疲れた人、うつ状態の人ですが、その次に多いのがパニック障害(panic disorder)と言われる状態の人です。
 突然、息苦しくなり、動悸が起こり、「そのまま死ぬのではないか」という不安を感じ、救急車で病院に駆け込むという人もいます。呼吸が激しくなり、手足がしびれ、意識がなくなることもあります。これは過換気症候群(hyperventilation syndrome)と言われる発作です。
 パニックになるという症状ですので、パニック障害と呼ばれます。アメリカでは神経症という病名を使わなくなったのでこう呼ばれますが、かつて不安神経症(anxiety neurosis)と言われていた病気と同じものです。もっと昔には心臓神経症(cardiac neurosis)と呼ばれいたこともあります。
 この発作を一度経験すると、「また起こるのではないか」「何時起こるかわからない」という不安(予期不安と言います)が強くなり、一人で外出できなくなる人もいます。日常生活にかなり支障をきたすことになります。
 一方、内科的検査をしても、異常が無いのが普通です。「精神的なものですね」とか「自律神経ですね」とか言われておられることが多いようです。精神科や心療内科に行くように助言してくださる先生は親切だと思います。ご自分で抗不安剤を処方される内科医もおられます。しかし、「からだは悪くないですよ」と言うだけで、「ハイ、さようなら」という医師もおられます。皆さんは仕方なく、別の病院を受診し、また同じような検査をし、・・・病院を転々とされることになるのです。
 精神科医が専門とする病気の一つです。発作時に「気が狂うのではないか」という強い不安を感じる人もおられますが、狂うことはありませんので、安心してください。勿論、精神病ではありません。

パニック障害の治療と原因
 この病気は軽い抗不安剤(昔は精神安定剤と言いました)がよく効きます。発作が起こらないように薬をうまく使うことで、生活は実に楽になります。発作が起こっても薬を使うことで、救急車を呼ぶことも避けられます。
 ところが、この病気になりやすい人はもともと心配症と言うか、不安になりやすい性格の人が多いのです。心配症ですので「薬を飲むのも不安」ということになり、服薬しなかったり、すぐに薬を減らしたりする人がいます。隣のおばさんが「安定剤は癖にある」とか「依存症になる」とか聞かされると、不安になって服薬を止めたりする人もよくおられます。そのような時、私がお話することは「隣のおばさんと専門医である私の言うことと、どちらを信じるのでしょうね」と。繰り返して言いますが、薬を上手に使えばパニック障害は容易に改善するもので、薬はそのための便利な道具です。怖がらずに使いましょうね。

社交不安障害
 人前で話したり、集団の中にいると強い緊張が生じ、動機、息苦しさ、発汗、赤面などの症状が起こる不安障害があります。人の前では緊張して字が書けないという人もいます。これらを社交不安障害と言います。
 この治療も抗不安剤を使いながら、徐々に訓練していくのがいいでしょう。

閉所恐怖症や高所恐怖症
 たまたま不安の症状(例えば動悸、息苦しさ、パニックなど)が電車やバスの中で起こることがあります。この恐怖体験は「また発作が起こったらどうしよう」という予期不安が起こります。すぐに逃げ出せない場所が恐怖の場所となります。例えば、バス、電車、飛行機などに乗れなくなったりする人がいます。エレベーター、高速道路やトンネル、渋滞した道路、遊園地の観覧車などなど閉鎖空間が怖いという人もいます。美容室や歯科受診も恐怖の対象になります。このような状態を閉所恐怖症と言います。
 高いところが怖くて、高いところに上がれない人もいます。スカイツリーのような特別高いところでなくても、観覧車や展望台、脚立や階段を上がることが怖い人もいます。これを高所恐怖症と言います。
 これらの治療も必要な時は抗不安剤を上手に利用しながら、徐々に慣れていく訓練が治療となります。本格的な訓練療法は行動療法とか認知行動療法と言います。

★強迫性障害は次回にお話ししましょう。