精神衛生講座→第1回「執着性格」

「精神衛生講座」 

 人はいろいろな性格をしています。生まれつき持ち合わせている部分と育っていく過程で学習されたものが複雑に絡み合っているので、人の数だけ性格があると言えるでしょう。しかし、大まかに見ると人の性格は何種類かに分類することが出来ます。これから何回かに分けて、それぞれの性格についての特性を挙げ、その長所と欠点について、お話したいと思います。ご自分が「どの性格に属するのか」を知っておられると、何かと便利でしょう。
 
第1回 「執着性格」
 第1回目は「執着性格 immodithymic character」についてお話します。
 講談社の「精神医学辞典」によれば、「熱中性、凝り性、徹底性、几帳面、責任感旺盛などを特徴とする性格で、1930年頃当時九大の教授であった下田光造によって躁鬱病の病前性格として提唱された。当時はほとんど認められなかったが、今日では内外の学会の承認を得るに至っている」と説明されています。
 この説明では、よく解らないでしょうから、解りやすく説明します。執着性格の人は、何事にも熱心で、やりだしたら、いいかげんには出来ない人です。仕事でも遊びでも徹底的にしないと気が済まないので、仕事も遊びもかなりよく出来ます。中途半端には出来ないたちなので、仕事を途中で止めることが出来ず、夜中までしたり、仕事を家に持ち帰ってしたりします。特徴的なのは、翌日にしてもよいものをその日の内にやってしまわないと自分の気が済まないのです。その意味で几帳面と言われ、責任感があると言われます。人から文句を言われたくないのできっちりするという几帳面さとは違います。
 この性格の人は責任感が強く、自分の仕事をきっちりしますので、周りの人からは信頼され、職場では大変高い評価を受けていることが多いようです。仕事が片付かない内は、自主的に残業したり、休みの日に出勤したり、自宅に仕事を持ち帰ってまでも片づけようとするのですから、評価が高いのは当然ですね。こんな人が職場にいれば、仕事を任せておけるので安心です。本人も多少無理してでも自分の思い通りに仕事ができているとき、「仕事をしている」という満足感に浸っておれます。このような満足感がないといけない人とも言えます。
 反面、この性格が欠点として出てくる場合もあります。自分の思い通りに仕事や家庭が進まないと、かなり強い自己不全感に落ちる可能性があります。うつ病になりやすい性格と言えます。また、几帳面に仕事をすることは、いい加減に手抜きをして仕事を片付けることが出来ないということでもありますので、仕事量が多いと疲れて、うつ病になりやすくなります。このように、執着性の人はうつ病になりやすい(うつ病に親和性があると言います)のです。
 下田光造先生は躁鬱病に親和性があると書かれましたが、実際にはこれは正しくないでしょう。執着性格は「うつ病」に親和性があって、「躁鬱病」に親和性がある性格は循環性格と言われるものでしょう。循環性格については、またの機会に説明します。