精神衛生講座 第2回「強迫性格」

精神衛生講座: 第2回「強迫性格」

 人はいろいろな性格をしています。前回は執着性格のお話をしましたが、今回は「強迫性格 obsessive personality」についてお話しましょう。
弘文堂の「精神医学辞典」によれば、次のような説明があります。「強迫性格はドイツ語圏では制縛性格と言うことが多い。それは、堅苦しく、柔軟性に乏しく、几帳面で一面我が強く、杓子定規な性格であるが、内面的には、万事に自信が持てず、小心翼々としており、不快な感情を転導することが出来ず、過去の出来事にいつまでも捕らわれ、未来は多かれ少なかれ脅威的に感じられる。・・・(途中省略)・・・性格的に矛盾した両価的な点(丁重さと攻撃性、几帳面とずぼらさ、けちと浪費、やさしさと残虐)が見られるのが特徴的である」。
 この説明では、よく解らないでしょうから、解りやすく説明します。強迫性格の人は、表面的には礼儀正しく、何事にも几帳面で、ちょっと硬い人というイメージです。人に対しては優しく振舞、人の嫌がることも言えない方で、いわゆる「イエス・マン」であることが多いようです。
 しかし、これは表の顔です。少し自分の本音が言える相手の前では、裏の面が見えてきます。頑固で自分の我を通そうとする傾向が強く、自分の思いどうりにならないと攻撃的になったりもします。
 こうした性格の人は、小心で「他人が自分をどう評価するか」が気になるという特性があり、そのために、安心できない相手の前では、自分の本音を出すことが出来ないのです。ですから、相手から嫌われるような言動は出来ませんので、結局礼儀正しく、几帳面で、人にものを頼まれても「いや」と言えなかったりで、「いい人」を演じてしまうのです。内面では、我慢したり、耐えたりしているわけで、自由にものが言えません。人からどう思われるかが気になるために、自分の自由を束縛することになっているので、「制縛性格」という別の呼び名があるのです。強迫性格の人の几帳面さは、執着性格の人の几帳面さと違い、他人の目が気になるための几帳面さであって、人目が無い所や気にしなくてよい状況では、まるで逆にルーズであることが普通です。このように強迫性格は、他人の前で本音を出して不安になることを防ぎ、自分を守る機能(性格防衛という)を持っているのです。
 誰にも、裏と表(本音と建前)がありますが、強迫性格の人はこれがはっきりしています。自分が人目を気にしないでよい場所では、不安が起こらないので、本音がでてきます。頑固で融通が利かない、意地っ張り、けち、短気、表の優しさとは裏腹な攻撃性などが出て来るというわけです。
 このような説明をしますと、ずいぶん嫌らしい性格のようにも見えますが、他人と意見の対立をしないいい人でもあり、人目を気にして我慢していた性格の人ですから、気の毒な性格とも言えます。日本人には多い性格です。
 どこでも本音が出せず、我慢我慢で、「いい人」を演じ続けている場合は、病気になります。強迫性格の人の親和性のある病気は「強迫神経症」や「恐怖症」などです。ですから、裏にある本音が出せる場所や相手がある人は病気にならずに済みますので、その場所や相手を大切にしましょう。